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随筆 「天獄」 ここは天国か地獄か
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ついに地球の最後の日が来た。
巨大な隕石が地球に衝突した後、
地球は太陽系の軌道から出た。
これが地球上の圧力を上昇させた。
非常に重い重力によって、
人々は粉砕されようとしている。
時間の概念さえも無効になった。
地球は24時間では自転せず、
365日でも公転しないからだ。
地球は暗くなってからまだ夜明けに達していない。
次に同じシーズンになるまでの日数すらわからない。
ついに私は呼吸が困難になった。
地球上にはもう空気が少ないのだろう。
太陽光を受けられない植物は光合成できず
空気を作ることができない。
暗闇が続くと、空気は地球から消えるのだ。
ああ、私の意識は薄れてきた。
ああ、地球は終わりだ。
地球は地獄に行くのだろうか?
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「まあ、どうしたの?ナーちゃんがあなたの
顔の上で寝ているよ」
それは嫁さんの声だった。彼女は大笑いしている。
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我が家に住み着いた可愛いメス猫はナーオンと言う。
彼女はニャーと鳴かない。彼女はナーオンと鳴くのだ。
「なんとなく、ニャンと鳴く」のキャッチフレーズと共に
アンニュイアイドルとしてデビューしたこの娘は出産後に
アイドル引退をさせたが、今でも町内会の人気no.1の
アイドル猫である。子ウサギのようなフォルムに
エメラルドグリーンのつぶらな瞳、すこしハスキーな歌声は
シルヴィ・ヴァルタンをも彷彿させる。
おお、ここは天国だろうか。小悪魔アイドルの
可愛いナーちゃんが私の顔の上で寝ているのか。
「ナーちゃん、お父さんは呼吸ができないよ。
でも気持ちいいからここにいておくれ。モフモフ」
いや、しかし私は苦しい。
呼吸確保が困難になってきた。
どいてもらおうと息をフウフウと吹きかけたが
それが暖かくて気持ちよいのか、完全に私の顔の上に
鎮座してしまった。
呼吸できない、暑い、重い、しかし気持ちいい。
ここは天国か地獄か?
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そもそも天国だの地獄だのというのは
死んでからの事であって、生きてるうちに
悩む事ではない。
生きていて、どうしようもなくもがき苦しむ場面は多々ある。
しかしそれは客観的に見るとしょうもなく滑稽な
場面であったり、たわい無い馬鹿げた場面である。
天国に逝った友人達はそんな私を見てはらをかかえて
笑っているだろう。
それがこの世で窺い知ることのできる「天獄」なのだから。
本編を天に召された悪友達に捧げる。
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